2011年7月16日土曜日

ではの神

僕は昔、某ゲーム雑誌の編集をしていたんですが、その時に良く「ではの神」に会いました。

曰く「海外では・・・」「欧米では・・・」「アジアでは・・・」

いろいろ情報をいただけるのはありがたいんですが、それがホントかどうか、東京にいても検証のしようがないんですよね。でもって、みんな微妙に食い違っていたりするw

そりゃ食い違うんですよ。だってみんなポジショントークなんですから。

というより、すべての言説は多かれ少なかれ、ポジショントークなんです。どれだけ客観的な立場を取ろうとしても、その人の立場や価値観からは離れられない。あるゲームを遊んで「おもしろかった」という人もいれば「つまらなかった」という人もいる。それはそれでいいんです。だから「誰がどんな立場で発言したのか」という記名が必要なんですよね。

ところが、なかなか会社の机に縛られていては、周囲の状況がわからない。それで僕も実際はどうなのか、自分の目で知りたくて、フリーランスになりました。がんばって海外取材に行きました。そうすると、いままでわからなかったことが見えてくる。今まで聞いた話の中で、正しかったこともあったし、間違っていたこともありました。

・・・とまあ、こんな経験がSIG-Glocalization設立の個人的な動機付けになっています。一部の人だけにポジショントークと、そのうまみを独占させておかないで、みんなでいろいろポジショントークを言い合おうと。そうしたら多用な意見が集まって、より状況が俯瞰的に見えてきますよね。ま、僕の意見も多分にバイアスが入ってますのでw そんなもんですよ実際。

実際にSIGという場を作ることで、それまでとは比較にならないくらい多数の方々と知り合いになったり、いろんな話をセミナーや飲み会という場で共有させて頂けるようになりました。たいへんありがたいことです。

2011年7月13日水曜日

ローカリゼーション軽視の背景

たまにゲームメーカー大手の偉い人と意見交換をさせていただくことがあるんですが、しばしばローカリゼーション軽視の発言が出て、ビックリすることがあります。その一方で海外市場重視なんて言葉が出てきて、うーんなんだこれは・・・と思ったりするわけです。

こうした背景の一つとして、今の大手ゲームメーカーの多くが、アーケードゲームで急成長したことがあるんだろうなあ、と感じるようになりました。格闘ゲームやドライブゲームが好例ですが、パッと理解して短時間でコインを消費してもらう必要があるので、家庭用ゲームよりもローカリゼーションの必要性が少なかったんだろうなと思います。

でも、今やアーケードゲームのインフラって、日本くらいしかキチンと残ってませんよね。。。海外向け輸出の主力商品はコンソールゲームで、じっくり遊ばせるものが中心ですから、やっぱりローカリゼーションが重要になってくるわけです。

もっとも、全部のタイトルで全言語にフルローカライズすることは、現実的ではありません。そしてローカリゼーションは利益を最大化するための手段であって、目的ではありません。そのため優れたローカリゼーションには、ビジネス的な視点が必要不可欠です。

一方でローカリゼーションの予算とヒットの相関関係は不明確です。そのためビジネス層としても、ローカリゼーションにお金をかける根拠が欲しい。それがハッキリしない以上、ドカンとお金をかけられない。卵が先か鶏が先か・・・みたいな話になっちゃいがちです。

もう一つ、オリジナル版開発については、これまでにもたくさんの開発者インタビューなどがあり、そこそこ業界内でノウハウが貯まってきました。一方でローカリゼーションについては、まだまだノウハウが一般化していません。限られた情報がローカリゼーション関係者内部で閉じていて、オリジナル版開発部隊にまで広まっていない現状があります。

今年のGDCローカリゼーションサミットでも、バイオウェアの講演者は「ローカリゼーション担当者は伝道師たれ」と力説していましたが、もっともっと存在感と有益性をアピールしていかなければ、なかなか状況は変わっていかないでしょう。

ローカリゼーション担当者には大きく「パブリッシャーのローカライズ担当者」「ディベロッパーのローカライズ担当者」「ローカリゼーションベンダー」「フリーランスのゲーム翻訳者」の4レイヤーがあります。中でもパブリッシャー、ディベロッパー内のローカリゼーション担当者が、もっと伝道師として社内で働きかけていくことが、ビジネス層を動かしていく重要な要素になるのかなあと思います。

2011年7月12日火曜日

第8回セミナー参加者の方からコメントをいただきました

第8回セミナーを受講された方から、下記のようなコメントをメールでいただきました。たいへん興味深い内容でしたので、ご本人の許諾のもと、紹介させていただきます。

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(セミナーに参加して)やはり、「動かない物」の商品デザインと「体験させる」ゲームデザインは性質上違いが大きすぎるのではないかと思いました。

たとえローカリゼーションマップが死ぬほどの数があったとしても、実はゲームソフトのローカライズにはあまり有効に使えないかと・・・

コンテキストの概念は大事ですが、静的デザインレベルでは理解できてもゲームコンテンツはやはり翻訳のみでしか参考にならないと思いました。つまり、翻訳者そのものの仕事になり、ゲームのグローバライズには無理でしょう~少なくとも日本人のみで構成されたスタッフ、とくにディレクターが純粋な日本人であれば・・・。

よく直面する、コンテキストの問題はやはり、日本人の手振りと外国人の手振り。イベントシーンではどっちに合わせる? とかよくディレクターともめます。
大体、外国人の手振りに合わせることに・・・理由は、そのキャラは見た目外人っぽいから(アニメっぽくても)。

あと、ドアですね、押して空けるのか、引いて空けるのか。日本と欧米で逆なので・・・。

で、やはりゲーム内のキャラと背景(コンテキスト)はSFであっても外人っぽいので、欧米に合わせてもらうとか・・・。

つまり、なんか工業商品デザインで解くコンテキストとはまったく違っており、作り手が理解していないところで外国人に違和感を与える。最近はシナリオのレビューを翻訳者やローカライズスタッフでして「違和感」さを最小限にすることはしていますが、さすがにマップが日本地域に基づいているのは、そこは日本のままで通したりします~。

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実は第8回セミナーの2日前に、講師の安西さん、中林さんが主催されている、ローカリゼーションマップの勉強会に僕が呼ばれまして、相互講師としてゲーム業界のローカリゼーションの現状と課題について、ご紹介させていただきました。

その時も安西さんから「ゲームの場合は世界同時発売が重要で、そこが他の製品とは違うところだと感じた」というコメントをいただきました。

ゲームとゲーム以外の商品で、ローカライズにおける共通点と相違点は何か。もっと議論を積み重ねていければと思います。

2011年7月8日金曜日

第7回&第8回セミナー報告

前回の投稿からすっかり間が空いてしまいました。すみません。
6月21日、7月4日とセミナーを2回連続して開催いたしましたので、そのご報告と、今後の活動予定についてお知らせいたします。

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■■第7回セミナー
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第7回セミナー「モバイル向けソーシャルゲームのセミナー」では、サイバーエージェント様・ポットタップ様・プーペガール様の協力をいただき、開催させていただきました。
初めての平日夜開催、初めてのモバイルゲーム事例、初めてのワークショップと、初めてづくしのセミナーとなりましたが、50名を超える方々にご参加いただき、過去最大の規模のセミナーとなりました。

当日の模様は下記にてレポートされていますので、お暇な時にでも、ご参照いただければ幸いです。
http://www.gamebusiness.jp/article.php?id=3901

第一部の講演もたいへん興味深いものでしたが、第二部のワークショップでは、現在iPhoneアプリ向けに開発中の「プーペdeファッション(仮)」をテーマに海外展開を考えるという、非常にユニークなものとなりました。ご参加いただいた方々からも、他社様の開発中のタイトルについてアイディア出しをするスタイルが新鮮だったと、ご好評いただけました。

異色タイトルとはいえ、コンソールゲームの開発では考えにくいことで、こうした点からもソーシャルゲームのユニークさが際だったように感じられました。

モバイル向けソーシャルゲームのセミナーについては、ニーズが高いこともあり、継続して議論を深めていくべきかと考えています。講演者や運営のアイディアなどについて、ご意見などをお寄せいただければ幸いです。

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■■第8回セミナー
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第8回セミナー「ローカリゼーションマップ講演会」では、日経ビジネスで連載中の安西洋之さん、
中林鉄太郎さんに「ローカリゼーションマップ」の考え方について、ご講演いただきました。またサイバーエージェント様、ポットタップ様、サムザップ様に、重ねて会場提供のご協力を賜りました。

ゲーム業界以外の知見を広く学ぶという趣旨で企画いたしましたが、受講者アンケートでは、おおむね好評だったようで、運営側としてもホッといたしました。
ただ、二部のディスカッションは議論が中途半端で留まってしまい、満足度が低くなってしまった点は反省点と考えています。

講演内でも紹介されましたが、近く上梓される書籍「「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力」の出版後に、内容を下敷きに、ゲーム業界に落とし込んで考えるワークショップなどを希望者で行う、などのアイディアも出ております。
こちらもご意見、要望などがあれば、ぜひお寄せください。
http://www.amazon.co.jp/dp/4822248631

なお当日の模様は、ツイッターのまとめサイトでご確認いただけます。
http://togetter.com/li/157922

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■■今後の予定
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第8回セミナーでも簡単に触れましたが、CEDEC前後で2回、セミナーを行うアイディアがあり、企画が進行中です。
次回、次々回はがっつりコンソールゲームの事例になる予定です。
概要が決まり次第、本MLで告知させていただきます。
また第7回、第8回と同じく、今後のセミナー登録はウェブサービス「ATND」を使うことになるかと思いますので、お見落としのないよう、よろしくお願い申し上げます。